海洋天然物ヘロミナド類の抗真菌作用

海洋由来の微生物が作り出すヘロナミドという低分子化合物が、細胞膜脂質を標的にして抗真菌活性を示すことを、京都大学の研究グループが解明しました。
これにより、新しい創薬標的の提案が期待できます。
まず、抗真菌薬とは何なのかについてです。
真菌は、細菌よりも大きく、高等な生物です。
代表的な例としては「カビ」「キノコ」が挙げられます。
こういった真菌の中には、人間の体に対して悪さをするものが存在します。
真菌による感染症を真菌症と呼び、有名な例としては「水虫」が挙げられます。
細菌と真菌には構造の違いもあります。
細菌は、DNAが細胞内に何の仕切りもなく入っています。
一方の真菌は、核というDNAなどの遺伝情報を包む膜があります。
では、ヒトと真菌の細胞にはどんな違いがあるのでしょうか。
それは、細胞膜を構成する成分です。
ヒトの細胞膜は「コレステロール」によって構成されています。
一方、真菌の細胞膜は「エルゴステロール」という物質から構成されています。
それから、ヒトの細胞には細胞壁がないのに対し、真菌には細胞壁があるという違いもあります。
この違いが重要なのです。
というのも、抗真菌薬の創出を行うにあたっては、この細胞膜成分の違いや細胞壁の有無を利用することが多いからです。
手術後の患者さん、抗がん剤を投与されている患者さんというのは、どうしても免疫力が低下してしまいます。
当然、真菌症に罹る可能性が高まります。そのため医療現場においては、古くから抗真菌剤が使われています。
しかしながら、新薬を作り出すのが容易ではないため、耐性菌の発生が課題になっています。
今回の京大グループの研究では、放線菌という微生物が産出するヘロナミドCと8-デオキシヘロナミドCという化合物が特定の膜脂質を認識することを明らかにしました。
この化合物により、細胞壁異常が引き起こされます。これが新たな抗真菌薬の創出に繋がる可能性があります。